みなさんは死因贈与(しいんぞうよ)という言葉を聞いたことがありますか?
遺言や遺贈に比べると知名度が落ちるため、聞いたことがなかったり、意味がよくわからない方も多いかと思います。
この記事を読んでなんとなくイメージとつかんでいただけばと思います。
死因贈与とは、その名の通り、贈与者の死亡に因って効力が発生する財産贈与です。
人が亡くなることで発生する贈与というと、遺贈が思い浮かびますが、死因贈与とは遺贈とは一部異なる条件で行われます。
ここでは、死因贈与とは何か、遺贈との違いを含めて詳しく解説しています。
遺贈と死因贈与、それぞれメリット・デメリットがありますので、これから先自分が亡くなったときに、誰かに財産を渡したいと考えている方は、検討の一助となれば幸いです。
死因贈与とは、財産を譲る人(贈与者)と財産を受け取る人(受贈者)の間で、「贈与者が死亡した時に財産をあげる」という形式の贈与です。
贈与者が生きているうちに予めお互いの合意を得た上での契約になります。
生前贈与とは違い、実際に贈与の効果が発生するのは贈与者が死亡した時です。
ですので、生前は自分で使用している不動産や自動車等も、亡くなってから受贈者にあげるということができます。
死因贈与には決まった形式はなく、極論、口約束でも成立するのですが、後々のトラブルを避けるために契約書を取り交わすのがよいでしょう。
また、不動産がある場合の登記手続の手間を考えると、公正証書で作成することと非常にスムーズですので、公正証書による作成をお勧めします。
遺贈は、被相続人の遺言によって贈与の意思表示がなされます。
ですので、相続人に事前に相談、約束をする必要はありません。贈与者の一方的な意思によって成立するということです(単独行為)。
相続人は、遺贈による贈与が意に添わなかった時には放棄をすることができます。
死因贈与では、贈与者が生きているうちに、財産をあげる側ともらう側が双方合意することで契約が成立します。
例えば、家などの不動産は、管理の面などを考えると譲り受けたくないと相続人が考えることもあり得ます。死因贈与では、双方が事前に話し合って、意思を共有したうえでの贈与になりますので、そういった点では安心です。
つまり、遺贈と違い、死後に相続人に放棄されるリスクがなく、生前に贈与の事実が確定するのが死因贈与の特徴です。
課税については、死因贈与は「贈与」との名称ですが、贈与税ではなく相続税の対象です。
相続税は、原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含みます。)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。
(国税庁ホームページ No.4105 相続税がかかる財産 より引用)
このように、死因贈与も相続人の死亡によって受け取る財産であるため、相続税の対象となるわけです。
結果的にどちらが得になるかは状況によって異なりますので、専門家に相談して検討するのが良いでしょう。
遺贈と死因贈与の違いの詳細は、以下の記事をご参照ください!
死因贈与には、もらう側が何らかの負担を負うことと引き換えに贈与を受けるという「負担付き死因贈与」という形態も存在します。
例えば、贈与者が子に対して、「同居して介護や生活のサポートをしてくれたら、自分の死後に自宅をあげる」と約束するような場合がそれにあたります。
こういった負担付き死因贈与の場合、受け取る人がすでにその負担分を果たしているとみなされる場合、遺言よりも優先されることもあります。
通常の死因贈与契約と遺言書であれば、もしもその二つの内容に矛盾があった場合、
作成日がより新しい方が優先されるのが原則です。
しかし、負担付き死因贈与の場合はその限りではありません。
例えば上記のケースで言うと、親子間で介護や生活の補助を条件とした負担付き死因贈与契約が成立していて、子が十分にそれを行っていた場合、たとえ遺言でその内容にそぐわない相続(子以外の人物に全ての財産を譲るなど)が指定されていたとしても、すでに条件は履行されているとして死因贈与の契約が優先されるのです。
同様に、贈与者が負担付き死因贈与の撤回を申し出たとしても、すでに受贈者がその負担を十分に履行した後であれば、撤回は認められないとされています。
まずは、贈与者と受贈者の間で、何を贈与するかの合意をします。
死因贈与に執行者は必須ではありませんが、決めておくと、贈与者の死後スムーズに手続を進めることができます。専門家に任せれば相続人自身の手間や負担は大きく軽減できます。
仮に執行者を決めていない場合、贈与者の相続人全員の協力が必要になってしまいますので、決めておくことをお勧めします。
前述のとおり、死因贈与は口約束でも成立する契約ではありますが、当然“言った・言わない”でトラブルの元になりやすいです。必ず書面に起こし、さらに公正証書の形を取っておけば安心です。
最寄りの公証役場に行って書面を作成する流れとなります。
贈与する財産の中に不動産があれば、生前から仮登記をしておくことができます。
「始期付所有権移転仮登記」といい、贈与者が生きている間は所有権は変わらずに、贈与者が亡くなった時に所有権が受贈者に移るという登記ができます。
これをしておくことで、贈与契約に確実性がもたらされる上、亡くなった時の相続人の手続きもスムーズになります。
この登記は、死亡を始期とする「始期付所有権移転仮登記」で、生前に贈与者と受贈者との間でなされるものです。
仮登記ですので、所有権が移転することはありません。
【具体的な登記手続】
贈与者と受贈者の共同申請で行うのが原則です。
もっとも、例外的に受贈者の単独で行うことも可能です(ただし、贈与者の承諾書+印鑑証明書が必要)。
なお、公正証書に承諾する旨の記載があれば、贈与者の承諾書・印鑑証明書は不要で、かつ受贈者の単独申請が可能です。
この登記は、死亡後になされる登記です。
本登記ですので、所有者が移転し、登記が完了します。
【具体的な登記手続】
執行者が選任されているか、公正証書で作成したかどうかで、添付書類や手間が大きく異なります。
公証役場で作成する手間や費用を考えても、公正証書を作成するメリットは大きいです。
迷えば、「公正証書で作成し、かつ執行者も選任しておく」方法をお勧めします。
このように、死因贈与は上手く利用すれば遺す側、受け取る側双方の意思を尊重した相続が可能です。
生前贈与、遺贈と比べるとそれぞれメリット、デメリットがあり、状況によって最適な方法も変わってきますので、お悩みの場合は、元気で健康な早いうちから専門家に相談し、準備を始めていくのがよいでしょう。
当事務所(千葉市・船橋市・習志野市の津田沼・千葉相続相談室。LEGALMOT(リーガルモット)司法書士事務所)では、疎遠な方、会ったこともない方が相続人にいたという場合でも、相続手続きを全面的にサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください★